突然できた公園のような場所

イオン大村店あたりをGoogleストリートビューで見ていたら、その商業地帯一帯を管理している不動産会社の社屋がなくなっていた。特別に関わりがあったわけではないが、情報のやり取りで少し接点があったのと、社名もユニークだったので覚えていた。どうやら昨年、どこかの会社に事業譲渡して解散したらしい。

社屋は、管理している商業地帯一帯の領域内にあった。ショッピングモール、電器店、スポーツ用品店、スターバックス、結婚式場、そんな賑やかなエリアの中にぽつんと場違いに存在する、ごく普通の二階建ての社屋だった。それが消えている。しかし更地になっていたわけではなく、なぜか公園になっていた

ただ「公園」と言い切ってしまうのもちょっと違和感があって、まず地面は芝や土ではなく舗装用のタイルが敷かれていて、数本の木が植えられているが、設備といえる類は何もない。木のうち一本を囲うようにベンチがあるのだが、そもそも入口はチェーンで封鎖されていて、一般に提供されている感じではない。その傍らにおしゃれなステンレス風の立て看板が設置されているが、ここが何という場所なのか、誰が管理しているのかなど、何も書かれていない。まるでのっぺらぼうのような公園だ。

普通に考えると、この場所は現在事業譲渡先が権利を有しているのだろうけど、なぜわざわざ公園にしたのだろう。更地のままより公園らしい見た目にしておけば固定資産税を低減できたりするのだろうかなどとも思ったが、仮にそうであっても、そもそも公園を作るのだって相当な金がかかる。長い目で見れば効果があるかもしれないが……。


そうやって違和感をずっと抱き続けていたところ、ここが私有地ではない、つまり市の土地である可能性に思い至った。ここ一帯はもともと存在した地面ではなく、大村湾の一部を埋め立てて作られた商業地なのだ。不動産会社が土地一帯の権利を有しているわけではなく、権利は市がずっと持ち続けていて、管理をずっと委託されていたという関係だった可能性がある。

そうであったなら、なくなった会社の跡地の権利は事業譲渡先ではなく市にあり、市はそこを公園的なスペースにした……という流れが想像できる。都市計画上、必ず一定の割合で公園を作らないといけないというような決まりを聞いたこともあるし、どこかに作らざるを得ないならここに作る、というくらいの温度感で作られたのかもしれない。

上記はあくまで想像でしかないが、少なくとも譲渡先の企業に「空いた土地にはとりあえず公園を造る」というポリシーがあるから、というようなほんわかした理由ではなさそうだ。入口にあるのっぺらぼうの看板にはそのうち「コミュニティスペース」とかいう当たり障りのないふわっとした名前が書かれるのだろうか。


ふとアップルもストリートビュー的なことをやっているという話を思い出したのでマップにアクセスしてみたところ、それにあたる「Look Around」は使えなかったものの、マップの航空写真はすでに公園になった状態のものになっている。Googleマップと比較し画質がクリアであることにひとしきり感心しつつ、私は2023年から今までに何が起こっていたのかをほぼ確信した。

その確信のままGoogleストリートビューに戻ってよく調べると、2023年12月の時点では旧社屋がまだ存在するが、その敷地の右奥の方に新しい建物がある。つまり会社は事業譲渡よりも前に新しい社屋を造って、そこへの引っ越しを進めていたようだ。そして2024年6月には旧社屋がなくなり公園造りが始まっているが、それから半年程度で事業譲渡が行われ、会社は解散している。2025年5月には新しい社屋のドアのガラス面にそれらしい張り紙が一枚されているのを確認できる。

公園と社用敷地は低めの柵で分けられており、直接行き来はできなさそうだ。アップルのマップの航空写真を見ると、タイルが敷かれた公園とは対照的に、社用敷地の方は社屋とほぼ同じ面積のエリアが芝生に覆われて緑化されている。会社規模を拡大する際の用地として考えられていたかもしれないが、今は裏庭のようなもので、夏になれば社員がバーベキューでもするような光景が想像できる。しかしそんな季節は1回だけ、ないし一度も訪れなかったかもしれない。

事業譲渡の話を進めつつも新社屋を造る、というのは流石に考えづらいので、新社屋で心機一転再スタート、とした後に事業譲渡の話が進んだと考えるのが自然だろう。つまり最も可能性が高いのは「新社屋への移転完了後、旧社屋エリアを市に返却したタイミングで事業譲渡の話が持ち上がった」というシナリオだ。実際に事業譲渡をするほどの状況だったわけで、これならすべて辻褄が合うように思える。


せっかくの新社屋は譲渡先会社の大村営業所ということになるのだろうが、駐車場にもチェーンが張られドアにも紙が貼ってある以上、常駐的に利用されているようには見えない。新しい社屋がこれではもったいないので、もし売られているのならどこか買い取ってほしい。

最初の方にざっくり書いたが近隣にはスターバックス、星野珈琲店、コッペ田島(コッペパン専門店)、ヤマダデンキ。自転車があれば数分で行ける範囲にイオン大村、ダイソー、セカンドストリート、スシロー、ガスト、濵かつ(リンガーハットがやっているとんかつ屋)、眼鏡市場、中古車のガリバー、市営の屋内プールまである。結婚したくなったらパークベルズ(結婚式場)もあるし、毎年8月1日には至近距離で花火大会を見られるおまけが付いてくる。

道路の向かいにはフタタ(スーツ屋)まである。ここまでくるともうビジネスパーソンのためにあるようなもので、金さえあれば何にも困らない。ただ唯一欠点を挙げるとすれば、その経緯上なかなか事業運が上向かなさそうな社屋ではある。


本筋からそれるので省いたが、会社跡地をGoogleマップで見ると、なぜか聞いたことのない政治団体の名前が表示される。どうやら不動産会社の社長が自らの政治団体を同じ所在地に登記していたようだ。これも5年くらい前に解散しているようなのでGoogleマップに表示されるのはおかしいのだが、こういった情報は編集権限を持っている人間が追加したり削除したりしているらしいので、それこそどこかの会社が新たなピンを立てようとしない限りは残ったままになりそう。